AI（Artificial Intelligence：人工知能）は、最近ではアルゴリズム、ディープラーニングの発展、データ量の増大、処理の高速化による判断の精緻化、自動化として語られることが多くなっています。アルファー碁や自動運転のイメージです。AIには実はもう一つ、人間の脳の再現（エミュレーション）、人間の知識、意識の再現という側面があります。こちらは心理学、哲学的、倫理的な問題が絡んで来ます。小説、映画のネタにはなっていますが、こちらの方は最近ではあまり語られません。人型ロボット、鉄腕アトムのイメージです。VR（Vertual Reality：仮想現実）にも2つの捉え方があります。わが国では「仮想現実」というと、ありもしない偽の現実という、どちらかというと消極的なイメージです。一方英語で”Vertual Reality"というと、なくても現実感があるという、積極的なイメージです。あの時の表現、「行く」と「来る」、”go"と”come"の使い方に似ています。VRにはヘッドマウントディスプレイ（HMD）がつきものですが、プレステ4にしてもオキュラスにしても持っている人を見たことがありません。最近オキュラスもTVコマーシャルを始めました。どれだけの人が気付いたかな？データグローブ、データスーツにつながって、「レディ・プレイヤー・ワン」の世界となります。AR（Augmented Reality：拡張現実）はあまり話題になりませんが、初期のイメージはロボコップやターミネーターの視野内のデータ、戦闘ヘリ、アパッチのヘッドアップディスプレイです。現在は携帯のアプリの世界にとどまっています。HMDでVR＋ARを用いてシュール・リアリティー（SR:超現実）なんてことになると、60年代のドラッグカルチャーのトリップ体験みたいになりますね。ITバブルが崩壊後、久しぶりに今度は期待と不安を織り交ぜながらのAIバブルの始まりです。

テレビなどでも最近では、人工知能が将棋で人間に勝った話題などが特集されていたり、将来AIには全人類の知能を合わせても勝てなくなるなどと予想されたりしています。未来への期待と共に、漠然とした不安を抱える人もいると思いますが、本書を読んで気付かされた事があります。「人間の知的能力は特定分野において随分以前から抜かされている」　本書はIT（情報技術）の歴史書であるが、同時に２０４５年という先の未来まで読み解く。２０４５年というとカーツワイルがシンギュラリティ（特異点）に至ると設定している年であり、コンピュータの能力が人間を超え、これまでとは全く異なる世界が現れるとしている。カーツワイルはシンギュラリティに至ると、人間の脳をスキャンしてアップロードできたり、人間は不死になると予言しているが、本書はあくまでも歴史書である為に、過去を振り返りつつ現在や将来について考えるヒントとなればというスタンス。手堅い内容ともいえる。本書では腕木通信を出発点とし、その後の情報技術の進展を事細かに解説していく。資料として挿絵や当時の白黒写真なども入るがそれほど多くはなく、文章が大半を占める構成。ざっくりとした内容ではなく、時代背景なども含めた実に細かな内容であると感じました。これらの進化はIT（情報技術）という枠組みに一括りにする事はできるが、生命の種の継続した自己同一性とは明らかに違い、それ故にITの進化は膨大で読み応えのあるものとなっている。

ＡＩが日常生活にかなり入り込んで、いつの間にか、ごく普通に語られるようになりました。そんなときに本書を目にして、とても興味を持ちました。しかし、読みはじめてみると、通信技術の語彙に不案内な私には、やや読みにくかったし、丁寧に解説された電話以前の歴史は、少し長いと感じました。ただ、一つの技術の革新がこれまでの世の中で想像できなかった様々は人々の活動を生み出し、その恩恵も負の働きもあり、さらに必要な社会の仕組みや法整備などその影響は計り知れず、その繰り返しの中で淘汰されたり新たな解決策を講じたりして発展を続けていくということは、よく理解できました。個人的には、電話が登場して以降の章は、ドラマや映画で目にしたことや自分の成長過程で体験してきたこととも重ねあわせてかなり理解しやすくすらすらと読めました。そして、本書を読みはじめた一番の決め手となった「未来像」については、本書最終章エピローグに凝縮されています。もしかしたら、エピローグを先に読んでもいいかもしれません。人間が人間でい続けるために、高度に発達した情報技術のもとではやはり高度で強固な意思決定をする強さが求められているように感じました。

ネットに触れたのが遅く、もっとITについて詳しく知りたいなと思い、手にしました。読んでみると成る程。思っていた以上に長く、かつ紆余曲折を経て今の老いも若きもネット環境に触れられる恩恵を私たち得られたのだなと思うと同時に、これから、仕事に人がいらなくなるという、うっすらとした不安も頭に過りました。しかし、ひとつ勉強になったので星４つ。

情報通信の意味でＩＴを使っているのは間違いではないのだがその概念は2000年代のPCやWEBの発達から、ＩＴ、ICTという概念が生まれたことによるものである。ITAAの定義では”コンピュータをベースとした情報システム、特にアプリケーションソフトウェアやコンピュータのハードウェアなどの研究、デザイン、開発、インプリメンテーション、技術サポートあるいはマネジメント”となっているが本書では独自に「情報を発信・受信・流通する技術」と超おおざっぱに再定義しているので一般的な前述のＩＴではなく、「有史以来からの情報技術全般（含むアナログ）」でなのである。独自に言葉の意味を再定義した単語を書籍のタイトルにするのは正直いって錯誤狙いの釣りタイトルにしか思えない。本来の意味におけるＩＴは薄い内容であり、期待したほどのものではなかった。またなぜか、梅棹忠夫氏が序盤からろくな説明もなく名前が出てきて、読者が知っている前提で話が進むさらに「梅棹忠夫氏ならどうかんがえるだろうか」という前提で本書は書かれているため知らない人には話がさっぱり見えない。書いている側の情熱は伝わるがこっちにはさっぱりである。少なくとも有史からの「情報を発信・受信・流通する技術」を大まかに知りたい人にいいかもしれないがＩＴの歴史というには、正直不満が残る内容であった。

ITがテーマの本というとここ数十年にフォーカスしたものが多いような気がしますが、本書では1794年の腕木通信から書かれており、これまでとは違った視点で物事を捉えることができます。知らないことも多く歴史の本としてはおもしろく読むことができました。